健康運動指導士とは?取得しても意味ないと言われる理由も解説

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健康運動指導士とは?取得しても意味ないと言われる理由も解説

もくじ

健康運動指導士とは?生活習慣病予防の専門家

健康運動指導士による運動指導
健康運動指導士とは、一人ひとりの心身の状態に合わせて、安全で効果的な運動プログラムを作成し、実践をサポートする専門家です。

特に、高齢化が進み、生活習慣病が社会問題となっている現代日本において、その予防と改善を「運動」の側面から支える重要な役割を担っています。
医療と運動をつなぐ架け橋として、病院や介護施設、保健所など、幅広い分野での活躍が期待される資格です。

厚生労働省所管の「公益財団法人 健康・体力づくり事業財団」が認定

健康運動指導士は、民間のフィットネス団体が認定するトレーナー資格とは一線を画します。

この資格を認定しているのは、厚生労働省の所管法人である「公益財団法人 健康・体力づくり事業財団」です。
1988年に厚生大臣の認定事業としてスタートした歴史と実績があり、その公益性の高さから、医療や介護、行政の現場で非常に高い信頼性と専門性が認められています。

いわば、「運動による健康づくりの専門家」として国が認めた、公的な性格の強い資格とも言うことができます。

個人の状態に合わせた安全で効果的な運動プログラムを作成

健康運動指導士の最も重要な役割は、運動プログラムの作成と調整(コーディネート)です。
対象者が抱える健康課題(高血圧、糖尿病、肥満など)や、体力レベル、既往歴などを正確に評価した上で、科学的根拠に基づいた最適な運動メニューを立案します。

ただ単に運動を教えるだけでなく、「なぜこの運動が必要なのか」「どのような効果が期待できるのか」を説明し、対象者が主体的に健康づくりに取り組めるよう動機づけることも大切な仕事です。
医師や管理栄養士、理学療法士など、他の専門家と連携しながらチームでサポートにあたることも多く、専門家間の連携におけるハブのような役割も果たします。

健康運動実践指導者との違いは?

健康運動指導士とよく似た名称の資格に「健康運動実践指導者」があります。
このふたつはその名称から混同されがちですが、その役割には明確な違いがあります。
両者の違いを簡潔に言うと、以下のようになります。

  • 健康運動指導士:運動プログラムを「作る(プランニングする)」のが主な役割。
  • 健康運動実践指導者:作られたプログラムに沿って、集団や個人に対して運動を「教える(実技指導する)」のが主な役割。

例えるなら、健康運動指導士が「運動の設計士」であるのに対し、健康運動実践指導者は「現場のインストラクター」のようなものです。

もちろん、指導士が実践指導を行うこともありますが、資格としての主眼はプログラムの作成・管理に置かれています。
そのため、健康運動指導士の方が、より医学的・専門的な知識が求められる上位資格として位置づけられています。

健康運動指導士は意味ない?役に立たないと言われる3つの理由

悩む女性
「健康運動指導士」と検索すると、関連キーワードに「意味ない」「役に立たない」といった言葉が表示されることがあります。
これには、資格の特性や制度に関するいくつかの理由が存在します。

なぜこのように言われることがあるのか、主な3つの理由を客観的に解説します。
これらのデメリットや課題を理解することは、資格の価値を正しく判断する上で非常に重要です。

理由1:名称独占資格ではないため、なくても指導はできる

最も大きな理由として、健康運動指導士が「名称独占資格」ではない点が挙げられます。
医師や理学療法士のような「業務独占資格」は、その資格がなければ関連業務を行えませんが、健康運動指導士はそうではありません。

極端に言ってしまえば、資格がなくても「運動を指導する」こと自体は誰でもできてしまいます。
そのため、特に民間のフィットネスクラブなどでは、他のトレーナー資格や実務経験が重視されることも多く、「この資格がなければ仕事ができない」という状況が少ないことが、「取得しても意味がない」と言われる一因になっています。

理由2:資格取得までの費用と期間の負担が大きい

健康運動指導士の資格を取得するためには、養成講習会の受講が必須となります(※養成校卒業者などを除く)。
この講習会の受講料は、テキスト代なども含めると合計30万円近くにのぼり、決して安価なものではありません。

さらに、講習会は合計104単位(1単位=90分)と長期間にわたります。
社会人が働きながら取得を目指すには、時間的にも金銭的にも大きな負担がかかります。

この高いハードルを越えても、後述するように必ずしも高収入に繋がるとは限らないというコストパフォーマンスの観点から、「割に合わない」と感じる人が少なからずいるのも事実です。

理由3:活躍の場が限定的で、給料アップに直結しにくい

健康運動指導士の専門性が最も活かされるのは、病院やクリニック、介護老人保健施設、市町村の保健センターといった医療・介護・福祉・行政の分野です。
これらの領域では資格が高く評価される一方で、民間のパーソナルジムやフィットネスクラブからの求人は、他のトレーナー資格(NSCAなど)に比べて少ない傾向があります。

また、主な活躍の場となる医療・介護分野は、一般的に給与水準が大幅に高いわけではないため、「資格を取ったから給料が劇的に上がる」というケースは稀です。
このため、特に高収入を目指すトレーナーにとっては、魅力が薄いと感じられてしまうことがあります。

それでも健康運動指導士を取得するメリットとは?

メリット
前述のようなデメリットが指摘される一方で、健康運動指導士は特定の分野において、他のどのトレーナー資格にも代えがたい大きな価値とメリットを持っています。

特に、今後の日本社会でますます需要が高まる領域で活躍したいと考えるなら、その専門性は強力な武器となります。
ここでは、それでもこの資格を取得するべき具体的なメリットを3つ紹介します。

メリット1:医療機関や介護・福祉施設での高い信頼性

健康運動指導士の最大の強みは、その圧倒的な信頼性にあります。
厚生労働省の所管法人が認定する公的な性格の強い資格であるため、医師や看護師、理学療法士といった医療専門職からの信頼が厚いのが特徴です。

そのため、病院のリハビリテーション科や生活習慣病外来、介護老人保健施設、福祉センターなど、民間のフィットネストレーナーが参入しにくい医療・介護の現場で活躍できる可能性が大きく開かれます。
安全管理や健康リスクへの配慮が最優先されるこれらの施設では、「健康運動指導士」の肩書きは何よりの安心材料となり、協働する専門職として認められやすくなります。

メリット2:生活習慣病予防に関する高度な専門知識の証明

養成講習会で学ぶ内容は、単なるトレーニング理論に留まりません。
内科学、整形外科学、運動生理学、栄養学、運動心理学など、医学的な知識を幅広く、深く学習します。

これにより、高血圧や糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病のリスクを持つ方(ハイリスク者)や、高齢で体力が低下している方に対しても、安全かつ効果的な運動指導を立案・実行できる専門家であることが証明されます。
健康な人だけを対象にするのではなく、何らかの健康課題を抱える人々を支え、QOL(生活の質)の向上に貢献できるのは、健康運動指導士ならではの大きなやりがいと強みです。

メリット3:特定の職場でのキャリアアップや採用で有利になる

「活躍の場が限定的」という見方は、裏を返せば「特定の分野では不可欠な人材」であることを意味します。

例えば、市町村が運営する保健センターや健康増進施設では、健康運動指導士の配置が推奨されており、求人募集の際に必須資格として指定されるケースも少なくありません。
また、企業の健康経営をサポートする分野や、生命保険会社が提供する健康増進サービスなどでも、その専門性が高く評価されます。

これらの安定した職場への就職や、施設内での責任者へのキャリアアップを目指す上で、健康運動指導士の資格は非常に有利な条件となるでしょう。

健康運動指導士の資格取得までの流れ|受験資格が重要

試験勉強のイメージ
健康運動指導士の資格を取得する道のりは、誰でもすぐに始められるわけではなく、認定試験の「受験資格」を得ることが最初の大きなステップとなります。
受験資格を得るためのルートは、大きく分けて2つあります。

ここでは、それぞれのルートと、独学の可否について解説します。

1. 養成講習会を受講するルート

社会人や、すでに関連資格を持っている人が目指す場合の一般的なルートです。
ただし、この養成講習会は誰でも受講できるわけではなく、受講するためにも一定の条件が定められています。
主な受講資格は以下の通りです。

  • 歯科医師、看護師、准看護師、助産師、薬剤師、管理栄養士、栄養士、理学療法士、作業療法士、臨床検査技師などの医療国家資格を持つ人
  • 4年制大学以上(体育系、教育系、栄養系、医療系など)の卒業者(卒業見込者含む)
  • 健康運動実践指導者、スポーツプログラマーなどの資格を持つ人

上記のような条件を満たす人が、指定された養成講習会(合計104単位+α)を受講・修了することで、初めて認定試験の受験資格を得ることができます。
つまり、ある程度の専門的なバックグラウンドを持つ人が、さらにスキルアップを目指すための道筋と言えます。

2. 養成校で学ぶルート

これから大学や専門学校への進学を考えている学生向けのルートです。
全国にある「健康運動指導士養成校」として認定された大学や専門学校に進学し、そこで所定の単位を修得して卒業(または卒業見込み)することで、認定試験の受験資格が与えられます。

養成校のカリキュラムは、資格取得に必要な知識やスキルが体系的に学べるように組まれています。
在学中に受験資格を得られるため、卒業と同時に資格取得を目指すことが可能です。

もし現在高校生などで、将来この分野で活躍したいと考えている場合は、養成校への進学が最もスムーズなルートとなります。

独学では取得できない?

結論から言うと、独学のみで健康運動指導士の資格を取得することはできません。
前述の通り、認定試験を受けるためには、必ず「養成講習会の修了」または「養成校の卒業」という条件を満たす必要があるからです。

市販の参考書などを自分で購入して勉強しただけでは、受験資格そのものが得られない仕組みになっています。
これは、健康運動指導士が、人の健康や安全に深く関わる専門職であるため、質の高い教育を履修した人材のみに門戸を開いていることを示しています。

健康運動指導士認定試験の難易度・合格率・費用

受験資格のイメージ
受験資格を得た後、最終関門となるのが認定試験です。

ここでは、試験の難易度や合格率、そして資格を取得し、維持するために必要な費用について具体的に解説します。
最終的なゴールとコストを明確に把握しておきましょう。

試験の難易度と合格率

健康運動指導士認定試験の合格率は、例年60%~80%台で推移しており、比較的高い水準にあると言えます。

しかし、これは試験問題が平易であることを意味するものではありません。
前述の通り、受験者はそもそも医療系の国家資格を持っていたり、大学で専門教育を受けたりした上で、長時間の養成講習会を修了した人たちです。

つまり、はじめから前提となる知識を持っている人が試験を受けようとするケースが多く、専門知識を持つ人が多く集まる試験であるため、合格率が高く出ていると解釈するのが適切です。
試験範囲は非常に広く、医学的な専門知識も問われるため、講習会の内容をしっかりと復習し、準備しなければ合格は難しいでしょう。

試験形式と内容

試験は、全国のテストセンターで受験するCBT(Computer Based Testing)方式で実施されます。
パソコンを使って表示される問題に解答していく形式です。

  • 試験形式:CBT方式(四肢択一)
  • 試験時間:120分
  • 主な試験範囲:
    • 運動プログラム作成のための運動生理学、機能解剖学、健康づくりに関する理論
    • 生活習慣病(高血圧、糖尿病など)、メタボリックシンドロームに関する知識
    • 整形外科疾患、精神障害に関する知識
    • 運動指導のための栄養摂取、運動心理、行動変容に関する知識
    • 運動プログラムの実際、運動負荷試験 など

見ての通り、非常に広範かつ専門的な知識が問われます。

特に、様々な疾患のリスクを持つ人への運動指導を前提とした、医学的な知識の比重が大きいのが特徴です。

資格取得・更新にかかる費用

資格の取得時と、取得後の更新時にそれぞれ費用が発生します。

  • 【取得時】
    • 受験料:13,619円
    • 登録料:24,200円
    • (※別途、養成講習会ルートの場合は約30万円の受講料が必要)
  • 【更新時】
    • 資格有効期間:5年間
    • 更新登録料:22,000円
    • (※更新には、5年間で所定の単位(20単位)を取得することが必要)

資格は5年ごとの更新制であり、更新のためには研修会への参加などで継続的に学び、単位を取得し続ける必要があります。
プロフェッショナルとして、常に知識をアップデートしていく姿勢が求められます。

健康運動指導士はどんな人におすすめ?

おすすめ・イチオシ
ここまで解説してきた特徴を踏まえると、健康運動指導士はすべての人におすすめの資格というわけではなく、特定のキャリアパスや目標を持つ人にとって、非常に大きな価値を発揮する資格です。
あなたが以下のような考えを持っているなら、この資格は最適な選択となるでしょう。

医療や介護の現場で運動指導をしたい人

病院やクリニック、介護老人保健施設といったメディカルな環境で、専門家の一員として運動指導に携わりたいと考えている人には、まさに唯一無二のうってつけの資格です。
医師や看護師、理学療法士といった国家資格を持つ専門職と連携(多職種連携)して仕事を進める上で、健康運動指導士が持つ公的な信頼性と医学的な知識は不可欠です。

単なる筋力トレーニングだけでなく、疾患の再発予防やリハビリテーション後の機能維持・向上といった、より専門的な役割を担いたい方に最適です。
人の「治療」や「ケア」のプロセスに、運動の専門家として深く関わることができます。

高齢者施設や保健所で働きたい人

これからの超高齢社会において需要が拡大し続ける、高齢者の健康づくりや介護予防の分野で活躍したい人にも強くおすすめできます。

デイサービスや特別養護老人ホームでの機能訓練指導員として、あるいは市町村の保健センターや地域包括支援センターで、地域の高齢者向けの健康教室や介護予防プログラムを企画・運営する専門職として、その知識を存分に活かすことができます。
安定した公的な機関で、地域社会の健康に貢献するという、大きなやりがいを感じられる仕事を目指す方にぴったりの資格です。

トレーナーとして医学的な知識で差別化したい人

すでに民間のフィットネスクラブやパーソナルジムで働いているトレーナーが、他のトレーナーとの明確な差別化を図り、自身の専門性を高めるためにも非常に有効です。

一般的なトレーナーが指導をためらうような、持病(高血圧・糖尿病など)を持つクライアントや、体力に不安のある中高年層に対して、安全かつ自信を持って指導できるようになります。
「メディカルフィットネス」の領域に強い専門家として、独自のポジションを確立し、より幅広いニーズに応えることができるトレーナーを目指すなら取得を目指す価値は高いと言えるでしょう。

まとめ|健康運動指導士は特定の分野で大きな価値を持つ資格

健康運動指導士による運動指導
本記事では、健康運動指導士の概要から、「意味がない」と言われる理由、そしてその本当の価値とメリットについて多角的に解説してきました。

結論として、健康運動指導士は「活躍する場所を選べば、他の資格には代えがたい絶大な価値を持つ専門資格のひとつ」であると言えます。
確かに、誰もが指導を行える民間のフィットネス市場だけを見れば、取得コストの高さから「意味がない」と感じる人がいるのも無理はありません。

しかし、その視点は、この資格が本来持つ専門性を見過ごしています。

今後の日本でますます需要が拡大するであろう医療、介護、福祉、そして生活習慣病予防の分野において、健康運動指導士の持つ公的な信頼性と医学的知識は、他のどんなトレーナー資格よりも強力な武器となります。
それは、医師や理学療法士と対等に連携し、健康に不安を抱える人々の人生を支えるための「パスポート」です。

あなたが目指すのが、単に筋肉を鍛えるトレーナーではなく、人の健康と人生に寄り添い、運動を通じて社会に貢献する専門家であるならば、健康運動指導士の資格は決して「意味のないもの」のはなりません。
それは、あなたのキャリアをより専門的で、より意義深いものへと導いてくれる、価値ある自己投資となるはずです。

  • この記事を書いた人

M3 GYM

M3 GYM(エムスリージム)は栃木県宇都宮市、JR宇都宮駅西口から徒歩5分のパーソナルトレーニングジムです。 完全マンツーマンでのトレーニングが好評で、老若男女問わず多くのお客様にご愛顧いただいております。

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